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尾崎財団が選んだ「今年の本」。いずれも財団書庫(咢堂文庫)でお読み頂けます。

咢堂ブックオブザイヤー2021


当財団では2014年より、憲政および国政・地方自治や選挙などに関するすぐれた書籍を顕彰する「ブックオブザイヤー」を制定し、今年で8回目になります。
選考には以下の4つの基準を設けています。

1.原則として2021年の著作であること(一部、昨年選考以降の作品も含む)
2.スタッフおよび選者が実際に自費購入し、購入者の視点で推薦できる書籍であること
3.政治全般(国政および地方自治、選挙や演説など)において、すぐれた著作であること
4.上記のほか選考年の社会情勢を鑑み、授賞にふさわしいと当財団が特に認めたもの

 本年は以下の作品に賞を贈る運びとなりました。
 2021年の選考および授賞理由についてはこちらをクリックください。

 PRESS RELEASE「咢堂ブックオザイヤー2021の発表について」武田翔 県政レポート

大賞(各部門単著・共著50音順)

総合
東電福島原発事故 自己調査報告(細野豪志/開沼博)
国政
難問から、逃げない。(かみかわ陽子)
日本を前に進める(河野太郎)
正義の政治経済学(水野和夫/古川元久)
地方
まちづくり幻想(木下斉)
選挙
ばらまき(中国新聞「決別 金権政治」取材班)
演説
評伝 大野伴睦(丹羽文生)
25歳からの国会(平河エリ)
いのちの政治学(中島岳志/若松英輔)
メディア
霞が関のリアル(NHK取材班)
外交・安全保障
文庫増補版 主権なき平和国家(伊勢﨑賢治/布施祐仁)
コード・ガールズ(ライザ・マンディ/小野木明恵)

東電福島原発事故 自己調査報告

東電福島原発事故 自己調査報告

細野豪志(著)/開沼博(編)
発行:2021年2月28日
出版社:徳間書店
【出版社サイトより】東電福島第一原発事故から10年。元原発事故収束担当大臣が気鋭の社会学者と共に、ファクトと科学的エビデンスで斬る調査報告。

枝野ビジョン

枝野ビジョン 支え合う日本

著者:枝野幸男
発行:2021年5月20日
出版社:文藝春秋
【出版社サイトより】「保守本流」を自称する立憲民主党の代表が、その真意と、目指す社会の未来像を提示する。明治維新以来の「規格化×大量生産社会」はすでに限界を迎えている。いま必要なのは、互いに「支え合い、分かち合う」社会だ。国民に「自助」を強いることのない、もう一つの選択肢を示す。

難問から、逃げない。

難問から、逃げない。

著者:かみかわ陽子
発行:2020年12月18日
出版社:静岡新聞社
【Amazon書籍紹介より】2020年、誰も想像し得なかったコロナ禍で世界が大きく変わった。これからの生き方、社会の在り方、国のかたちはまったく違うものになるだろう。しかし、かみかわ陽子の覚悟は揺るぎない。「慌てることなく、遠い将来を見据え、冷静に判断し、政治家として責任を果たしていく」。この国の未来を見据え、取り組んできたこれまでの議員活動を振り返り熱い思いや考えを語る。

日本を前に進める

日本を前に進める

著者:河野太郎
発行:2021年9月9日
出版:PHP研究所
【出版社サイトより】「この本は、河野太郎という政治家が、これまで何をやってきたか、そして皆さんと一緒に、これからどのような国や社会をつくっていこうと考えているのか、その考えをまとめたものです」(本書「はじめに」より)。記すのは生い立ちから政治家としての原点、父・河野洋平氏との関係や、閣僚として取り組んできた安全保障・外交戦略、災害対応、そしてエネルギー、社会保障、教育をめぐる政策。さらにデジタル化社会に向けた規制改革・行政改革や、新型コロナウイルス対策の切り札であるワクチン接種など、今までの自身の活動を振り返りつつ、今後の「日本を前に進める」ための政策を打ち出す。

美しく、強く、成長する国へ。

美しく、強く、成長する国へ。

著者:高市早苗
発行:2021年9月22日
出版社:WAC
【出版社サイトより】日本を守る責任。時代を拓く覚悟。私は、日本と日本人の底力を信じている。
序章 日本よ、美しく、強く、成長する国であれ!
第1章 私の『日本経済強靭化計画』とは
第2章 「危機管理投資」と「成長投資」
第3章 経済安全保障の強
第4章 サイバーセキュリティの強化
第5章 地方の未来を拓く
第6章 「生活者の視点」を大切に
第7章 分厚い中間層を再構築する税制
結章 新しい日本国憲法の制定

正義の政治経済学

正義の政治経済学

著者:水野和夫/古川元久
発行:2021年3月30日
出版社:朝日新聞出版
【出版社サイトより】正義無くして、利益も無し。21世紀の課題は、市場経済だけでは解決できない。 資本主義と民主主義を歴史から問い直す、経済学者と政治家の実践知!
〈経済学は誕生の経緯からして人類救済の学問である。21世紀は「正義の政治経済学」が必要となる〉――水野和夫
〈資本主義や民主主義の暴走は、「足るを知る」ことの対極にある、「自分さえ良ければいい」という心持ちから生じるのではないか〉――古川元久

あなたも当たるかもしれない、「くじ引き民主主義」の時代へ

あなたも当たるかもしれない、「くじ引き民主主義」の時代へ

著者:伊藤伸
発行:2021年12月10日
出版社:朝陽会
【Amazon書籍紹介より】「自分ごと化会議」は、世界で広がる 「くじ引き民主主義」のひとつ。政治や行政と縁がない人でも、自分の意見でまちがより良くなるかも、とワクワク感がやみつきになる人が続出! あなたも当たれば出たくなる⁉ そんな実例を多数紹介。

まちづくり幻想

まちづくり幻想

著者:木下斉
発行:2021年3月15日
出版社:SBクリエイティブ
【出版社サイトより】最新の統計と400を超える全国の実践事例から導いた、幻想の詳細とそれを打ち破るアクションとは?
コロナ以降の地方を立ち直らせるために、地域起こし分野にかかわる官民全ての人必読の1冊!

ライク・ア・ローリング公務員

ライク・ア・ローリング公務員

著者:福野博昭
発行:2021年9月16日
出版社:木楽舎
【出版社サイトより】「コロナ?人口減少?何があってもいける人といける場所は絶対残っていく。役所は、夢を語らなあかんねん。暗いこというたらあかんねん。夢語って怒られへんのが自治体職員やから」
『自治体職員ってこんなんできんの?!』と思うなかれ。「自治体職員でこんな仕事できるなら自分の仕事もこんなできる!」と感じてほしい。いかに仕事をおもろくするかを実践し、転がり続けた、笑いあり、涙あり、そして関西弁ありの福野ワールドへようこそ!

コロナ時代の選挙漫遊記

コロナ時代の選挙漫遊記

著者:畠山理仁
発行:2021年10月10日
出版社:集英社
【出版社サイトより】2020年3月の熊本県知事選挙から2021年8月の横浜市長選挙まで、新型コロナウイルス禍に行われた全国15の選挙を、著者ならではの信念と視点をもって丹念に取材した現地ルポ。
「NHKが出口調査をしない」「エア・ハイタッチ」「幻の選挙カー」など、コロナ禍だから生まれた選挙ワードから、「選挙モンスター河村たかし」「スーパークレイジー君」「ふたりの田中けん」など、多彩すぎる候補者たちも多数登場! 

ばらまき

ばらまき 河井夫妻大規模買収事件 全記録

中国新聞「決別 金権政治」取材班
発行:2021年12月15日
出版社:集英社
【出版社サイトより】広島のみならず、日本中を大きな政治不信の渦に巻き込んだ「大規模買収事件」。
それはどういったものだったのか。“買収夫妻”は何者なのか。この事件は政界に何を残したのか。そして、本当の“巨悪”は誰なのか……。
その全貌を広島の地元紙・中国新聞が総力を挙げて取材した、執念のノンフィクション!

評伝 大野伴睦

評伝 大野伴睦

著者:丹羽文生
発行:2021年5月10日
出版社:並木書房
【出版社サイトより】「伴ちゃん」のニックネームで、多くの人々に愛され、親しまれた元自民党副総裁・大野伴睦──。「サルは木から落ちてもサルだが、代議士が落ちればただの人」という名文句を残したことでも知られる。「義理と人情とやせがまん」をモットーに、鳩山一郎、吉田茂に忠義を尽し、三木武吉とタッグを組んで保守合同を実現させ、岸信介、池田勇人の後見人として初期自民党を育て上げた。戦後政治史に異彩を放つ大衆政治家の生涯を描いた初の本格的評伝!

25歳からの国会

25歳からの国会 武器としての議会政治入門

著者:平河エリ
発行:2021年7月31日
出版社:現代書館
【出版社サイトより】「総理大臣と国会、どちらが偉い?」「民主主義=多数決じゃないの?」「内閣不信任案はなぜ国会の“切り札”なの?」「参議院の存在意義とは?」「審議拒否はなぜ起こるの?」「国会における野党の役割とは?」「日本には、なぜ女性議員が少ないの?」など数々の疑問に、本書は明快に答えます。通読すれば、政治ニュースが100倍面白くなること請け合い。被選挙権を得る25歳以上必携、政治リテラシーの教科書です。

いのちの政治学

いのちの政治学 リーダーは「コトバ」をもっている

著者:中島岳志/若松英輔
発行:2021年9月1日
出版社:集英社クリエイティブ
【出版社サイトより】聖武天皇、空海、ガンディー、教皇フランシスコ、大平正芳―5人の足跡を追い、その功績や振舞い、残したコトバを読み解く。さらに芸術家、文学者、現代の政治家たちとの比較や分析を行いながら、縦横無尽に語り尽くす! 新しい次元の政治を拓くための徹底対談。集英社ウェブイミダスの人気連載を書籍化。

新聞・テレビではわからない、永田町のリアル

新聞・テレビではわからない、永田町のリアル

著者:安積明子
発行:2021年1月24日
出版社:青林堂
【出版社サイトより】菅政権はどこに向かっていくのか?
与野党共に忖度せず、冷静な眼差しで政界を追うジャーナリスト安積明子。
国民が知らない政治家の真の姿、永田町の裏側を語りつくす!

霞が関のリアル

霞が関のリアル

NHK取材班
発行:2021年6月16日
出版社:岩波書店
【出版社サイトより】NHK NEWS WEBの注目連載書籍化。激務で知られ、さらにコロナ対応で疲弊する霞が関官僚。不条理な働き方は、精神疾患、相次ぐ退職、なり手不足といった問題だけでなく、第一線で働く官僚の能力発揮を妨げ、国の政策を停滞させている。官僚本人、家族、政治家、関係者への緻密な取材から、その現状と構造に鋭く迫る。

文庫増補版 主権なき平和国家

文庫増補版 主権なき平和国家

著者:伊勢崎賢治/布施祐仁
発行:2021年10月25日
出版社:集英社
【出版社サイトより】日本はまだアメリカに占領されている! 1960年、日米地位協定発効から60年以上、日本は地位協定本文の改定を提起したことがない。しかしこの協定によって、ある領空は日本の航空機が通過できず、オスプレイ墜落事故や米軍婦女暴行事件が起きても何もできない現実がある。アメリカに依存した主権なき平和は、本当に平和と呼べるのか──。文庫化にあたり大幅改稿&増補をした特別版!

コード・ガールズ

コード・ガールズ

著者:ライザ・マンディ(著)/小野木明恵(訳)
発行:2021年7月16日
出版社:みすず書房
【出版社サイトより】第二次世界大戦中、米陸・海軍に雇われ、日本やドイツなど枢軸国の暗号解読を担ったアメリカ人女性たちがいた。
戦後も守秘義務を守り、口を閉ざしてきた当事者らへのインタビュー、当時の手紙、機密解除された史料などをもとに、情報戦の一翼を担った女性たちに光をあて、ベストセラーとなったノンフィクション。口絵写真33点を収録。解説・小谷賢。

相馬雪香特別賞(単著・共著50音順)

相馬雪香特別賞
たたかわない生き方(大下容子)
老いの福袋(樋口恵子)
(田村重信・屋宮直達他)

たたかわない生き方

たたかわない生き方

著者:大下容子
発行:2021年10月8日
出版社:CCCメディアハウス
【出版社サイトより】大下アナの「たたかわない」という、「たたかい方」。テレビ朝日の情報番組「ワイド!スクランブル」「大下容子ワイド!スクランブル」を23年にもわたって担当し、2002~17年には香取慎吾さんと「SmaSTATION!!」に出演。また、20年には役員待遇・エグゼクティブアナウンサーに就任。人気・実力ともそなえた大下アナがはじめて語る、仕事のこと、生きること、これからのこと。

老いの福袋

老いの福袋

著者:樋口恵子
発行:2021年4月20日
出版社:中央公論新社
【出版社サイトより】老年よ、大志とサイフを抱け! 88歳のヒグチさんの日常は初めてづくしの大冒険。トイレ閉じ込め事件から介護、終活問題まで、人生100年時代を照らす「知恵とユーモア」がつまったエッセイ

渋沢栄一と安岡正篤で読み解く論語

渋沢栄一と安岡正篤で読み解く論語

著者:安岡定子
発行:2021年2月22日
出版社:プレジデント社
【出版社サイトより】全国で『論語』を講義する安岡正篤の孫・安岡定子氏が、渋沢栄一の著書『論語講義』と安岡正篤の著書『論語の活学』を読み解き、心の安定を得て、誤った判断を避け、人間関係を円滑にして充実した人生を生きるためのヒントを解き明かします。

敬天愛人と仲間たち/続・敬天愛人と仲間たち

著者:田村重信・屋宮直達 他
発行:2021年2月19日/11月30日
出版社:内外出版
【出版社サイトより】「直達会は、大好きな素敵な友人と出会った素敵な方に、お声掛けして毎月開催している交流会です。Facebookの直達会グループだけで、素敵な友人が1,300人を超えます。 日本一、世界一、日本で活躍する方、世界で活躍する方、創業者、創設者、会長、社長、各種団体代表、アーティストから武道家、医者、弁護士、公認会計士など、職業も様々です。 今回はそんな素敵な友人たちに、素敵な思い、素敵な活動を執筆して頂きました。」 (「はじめに」より抜粋)
各執筆者の個別選評武田翔 県政レポート

2021年の選考および授賞理由について

尾崎財団が主宰する書籍顕彰事業「咢堂ブックオブザイヤー2021」。2014年の創設から8回目となる本年は、「憲政の父」と呼ばれた咢堂(がくどう)・尾崎行雄にちなんだ7部門を基準に書かれた著作に注目。昨年より現在も予断を許さぬコロナ禍をはじめ、各部門における課題を考えるうえで活発な議論や思索に資することを基準に不偏不党の立場で選ばれました。

総合部門の細野豪志・衆議院議員/開沼博氏「東電福島原発事故 自己調査報告」は、今年で発災後10年の節目を迎えた東日本大震災の担当大臣(当時)と、福島原発事故の問題と一貫して向き合ってきた研究者が積み重ねてきた丹念な記録です。あの時何があったのか、そして現在はどうなっているのか、そしてどこに向かうのか。10年という歳月に渡り、そこに住まう人々と向き合ってきた点が高い評価と支持を集めました。私たちは今後、福島の課題をいかに「自分ごと」として捉えるか。そうした覚悟が問われる一冊でもあります。

国政部門には、枝野幸男・衆議院議員の「枝野ビジョン」、かみかわ陽子・衆議院議員の「難問から、逃げない。」、河野太郎・衆議院議員の「日本を前へ進める」、高市早苗・衆議院議員の「美しく、強く、成長する国へ。」、水野和夫氏と古川元久・参議院議員による「正義の政治経済学」がそれぞれ選ばれました。
枝野ビジョン」は当時の民主党政権の中枢を支え「経営責任者」の立場にあった立場から初めて書かれた内省と、それを乗り越えての具体的な政策論が注目を集めました。注意ぶかく読むと決してすべてが与党の反対意見ではなく、むしろ共通項も数多く見受けられ「ここが楕円の中心だ」という声もありました。
難問から、逃げない。」は10年前に書かれた前作「視点を変えると見えてくる」に続く在職20年の節目としての棚卸しであり、またその間に取り組んできた公文書の在り方や法務大臣の職責について、その取り組みが高く評価されました。
日本を前に進める」は『「超日本」宣言』以来、著者がモットーとしている「わかりやすい政治」を念頭に書かれた点や、各章に共通するテーマ「デジタル化」にも温もりを求めるなど、一見相反する要素への相克に対する決意がスタッフを中心に支持を集めました。
美しく、強く、成長する国へ。」は国内外の企業動向や注目したテクノロジーの事例に富み、政策論としての具体性が高く評価されました。選者の中には書籍で取り上げられた企業の関係者もおり「よくここまで触れている」驚嘆する声もありました。
正義の政治経済学」は、8年前の対談「新・資本主義宣言」の正統な続編としてのみならず、歴史に対する畏敬や洞察などで読み手の知的好奇心をくすぐる対話が注目を集めました。ある選者からは「勇ましいばかりではない、政治というものに対する敬虔さに溢れる」という声も聞かれました。

地方部門は、政府や民間、自治体などそれぞれの立場で地域の活性化に取り組む3氏の最新著作がそれぞれ高く評価されました。
伊藤伸氏の「あなたも当たるかもしれない、「くじ引き民主主義」の時代へ」は、政府の立場や民間シンクタンクの立場で数多くの事業仕分けに携わった著者が一貫して提唱する「自分ごと」に主眼を置き、読み手の当事者意識を呼び起こす点が支持を集めました。
木下斉氏の「まちづくり幻想」は、民間の立場で全国津々浦々の地域振興を支えてきた「地域振興の実相」が描かれ、幻想という書名、その打破に主眼を置いた構成が評価につながりました。
福野博昭氏の「ライク・ア・ローリング公務員」は、地方活性化において最大の奉仕者である地方公共団体(奈良県庁)を務め上げた著者による、その半生記としての痛快さ、常に前向きなチャレンジ精神、そして実際に書籍を通じて対話するような臨場感の3点が賛同を集めました。自らが住まう地域を何とか元気にしたい、そう思う方はぜひとも3冊すべてお読みいただきたいと願います。

選挙部門の畠山理仁氏「コロナ時代の選挙漫遊記」は、前作「黙殺」で注目を集め、精力的な取材と候補者への肉薄ぶりに定評のある著者の最新作です。計15回の自治体選挙や首長選挙で繰り広げられるドラマの数々や、あとがきで著者が触れた貴重な提言の数々は、財団スタッフにとっても大いに刺激を与えてくれるものでした。
中国新聞「決別 金権政治」取材班による「ばらまき」は、今も全容解明が道半ばの大規模買収事件を扱ったドキュメンタリーですが、地域メディアの矜持や息づかいが感じられ、選考対象ぎりぎりのタイミングで出版を待ちわびた一冊でもありました。何よりも金権政治との決別は尾崎行雄が生涯にわたって主張し続けた「清き一票」に通じるものがあり、尾崎財団こそが評価するべき一冊と譲らない選者が出るほどでした。

演説部門には丹羽文生氏の「評伝 大野伴睦」、平河エリ氏の「25歳からの国会」、中島岳志氏/若松英輔氏「いのちの政治学」の3冊が選出されました。
大衆政治家・大野伴睦といえば「猿は木から落ちても猿だが、代議士が落ちればただの人だ」「政治は義理と人情とやせ我慢」等の語録が有名ですが、雄弁の数々の源泉は「政治家本人の信念と覚悟」である。そう解き明かした著者の業績こそが、本書の真骨頂であるという声も寄せられました。選考過程で書籍にひかれた蛍光マーカーも、圧倒的な数を誇りました。
25歳からの国会」は国会内で記録された発言や演説にも着目し、書籍そのものが「国会演説の近現代史」であるという点に評価が集まりました。国会制度の解説も分かりやすく、有権者が議場に関心を寄せることが民主主義の発展に繋がるという選評も寄せられました。
いのちの政治学」は古今東西のすぐれた指導者の言葉の数々を紐解き、その言葉が紡がれた時代背景や内面についても対話を通じて掘り下げていくスタイルが支持を集めました。中でも大平正芳・元総理のメッセージ「目に見えない力の結集」は政治に関心を寄せるすべての人が注目すべきという意見もありました。

メディア部門には安積明子氏の「新聞・テレビではわからない、永田町のリアル」、そしてNHK取材班「霞が関のリアル」と、三権それぞれのリアルを掲げた2冊が選ばれました。前者は過去2年に渡り受賞を重ねる著者の今年一冊目の著作です。与野党を問わずその至らない点を不偏不党の立場で「角度をつけずに」活写し、かつ諭すような文体が支持を集めました。また著者は総理大臣記者会見でも積極的に質問を投げかけ、報道機関本位でない「国民が知りたい、そして投げかけたい思い」を愚直なまでに問い続ける。そうした言行一致のスタンスも高く評価されました。
後者の「霞が関のリアル」は、日頃みずから声を上げることのない官僚機構、その「生の声」を丹念に拾い集め、活字を通じて公正に報じた姿勢が多くの共感を集めました。NHKといえばだれもが知る公共放送機関ですが、近年はWebメディア「NHK政治マガジン」でも積極的な活字発信を行なっています。今回の書籍はそうした公器の「意外な一面」でもあり、取材班の方々の奮闘記としても新鮮なものでした。

外交・安全保障部門は、選考の一翼を担う当財団主宰「咢堂塾」ならではの選考が展開され、伊勢﨑賢治氏/布施祐仁氏の「文庫増補版 主権なき平和国家」、ライザ・マンディ氏/小野木明恵氏の「コード・ガールズ 日独の暗号を解き明かした女性たち」がそれぞれ選ばれました。
主権なき平和国家」は4年前の2017年にもオリジナル版が選ばれていますが、今回の授賞にあたっては紙面の半数が増補とともに内容もアップデートされ、現在進行形の問題提起となっている点が高く評価されました。わが国が憲法前文にも記された「国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ」ならば、決して見過ごすことのできない一冊でもあります。
コード・ガールズ」は第二次大戦でわが国と戦ったアメリカの舞台裏を丹念に拾い上げた、430頁を越える大作です。単なる戦記であるのみならず、女性活躍のあり方を考える上でも多くの示唆に富むという意見もありました。また選者の一人は実際の「わが国のコード・ガール」でもあり、「この本はある意味で選者の生きざまそのものだ」という感嘆もあるほどでした。なぜ、先の大戦でわが国は破れたのか。この一冊を読むと見えてきます。

また、各部門以外でも特筆するべきと認められた書籍には当財団の副会長を長らく務めた尾崎三女・相馬雪香の名を冠し、「相馬雪香特別賞」として広範囲なジャンルより選出、ここに称えることと致しました。

大下容子氏の「たたかわない生き方」は、情報番組でMCを務める同氏初の著作です。第2章「人の心に寄り添う報道を」はメディアのあり方を分かりやすく、また第6章の「〜50歳、そしてこれから〜」は人生100年時代の折り返しとして共感できるメッセージが数多く込められている点に注目が集まりました。後述「老いの福袋」とセットでお読みいただきたい1冊です。
樋口恵子氏「老いの福袋」は、昨年の「老~い、どん!」の続編であると同時に、「やがては誰もが歩む道」と支持を集めました。およそ半年にわたる今回の選考期間において、財団内での蔵書貸し出し率が最も高かった一冊でもあります。
安岡定子氏「渋沢栄一と安岡正篤で読み解く論語」は、書名にもある渋沢栄一翁と、歴代宰相の指南役と仰がれた安岡正篤師を取り上げ、まさに時宜を得た一冊として支持を集めました。わが国の産業基盤の礎として大きな足跡を残す渋沢栄一、そして現在も多くの各界リーダーの規範である安岡正篤。『代表的日本人』を著した内村鑑三がもし続編を出したならば、間違いなく選ばれるであろう2名が並ぶ本と評した選者もいるほどでした。
田村重信氏/屋宮直達氏他による「敬天愛人と仲間たち」「続・敬天愛人と仲間たち」は南洲翁・西郷隆盛の生き方に感銘を受けた有志による随筆集です。初巻・続巻あわせて60名を超える寄稿陣によるメッセージの数々は各人が「全力で生きて来た」証であると同時に、それぞれの人生訓が凝縮されている点が高く評価されました。演説部門の「いのちの政治学」が提示した「見えない力の結集」の実践例
がまさに同書でないか、そのような意見も上がりました。

昨年からのコロナ禍が今もなお世界中を覆った2021年ではありますが、そうした閉塞感を打ち破るきっかけになれば。そのような願いを込め、私たち尾崎行雄記念財団は以上の各書籍を「咢堂ブックオブザイヤー2021」に選定し、著者ならびに出版に携わった関係者、そして出版社の皆様に対し、感謝を込めて讃える次第です。またこのたびの発表をご覧の皆様におかれましても、ぜひとも各書の魅力に触れていただき、今年を振りかえると同時に2022年を新たな想いで迎える一助にいただけることを願ってやみません。

以上文責・高橋大輔(尾崎行雄記念財団研究員・IT統括ディレクター)