2017.6.5
「ネット選挙の近未来」
昨年2016年は公職選挙法が改定され、選挙における投票年齢が従来の20歳から18歳まで引き下げられました。
さらに遡ること3年前、わが国におけるネット選挙が解禁、インターネットによる選挙運動が一部緩和されました。
その概要は総務省の関連サイトでも掲載されています。
http://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/naruhodo/naruhodo10.html
有権者に関する制限はメールを中心に残るものの、選挙期間中に候補者が自らのホームページやブログ、ツイッターなどの発信を行うことが出来るようになったのは画期的なことでありました。
その一方、候補者の観点が先行し、有権者にとっての利便性が置き去りとなっている現状を鑑みると、ネット選挙そのものには更なる加速が求められます。
咢堂・尾崎行雄は普通選挙の実現と普及に生涯を捧げました。
もしも尾崎が健在で、現在のネット選挙を目の当たりにしていたならば。
おそらく提言したであろうポイントを整理いたします。
(1)ポスター掲示板の電子化
選挙期間になると、街のいたるところに選挙ポスターの掲示版が設置されます。
あらかじめ選挙管理委員会にポスターの画像データを提出し、選挙管理委員会が運営する公式選挙ページにて全候補の画像を掲示すれば周知の公平性を保つことができるでしょう。
(2)上記に連動した、選挙公報の個別掲示
選挙公報の電子データ(PDFなど)は、すでに一部の自治体でもホームページへの掲載が実現しています。
その一方、全候補分のデータをダウンロードしなければ閲覧できないため、利便性の観点では疑問が残ります。
電子化されたポスター情報と同様、各候補者の公報を掲載すれば、紙媒体を入手できない有権者にとって比較選択の機会損失を防ぐことができます。
(3)政見放送のインターネット化
日本でYoutubeをはじめとした動画配信が本格的に普及し始めたのは約10年前、2007年頃からになります。
その間、自治体や衆参両議院、総理官邸などでも動画を活用した情報提供が活発に行われています。
選挙における政見放送も、そろそろインターネット化の波を捉えて良いのではないでしょうか。
(2016年、東京都知事選挙における政見放送)
(4)いずれの掲載および配信も、スマートフォンに対応すること
電話端末における高速データ通信が一般化した現在では、上記のポスターや公報、政見放送動画なども瞬時に手持ちのスマートフォンで視聴することが可能です。PCに拘らず、むしろスマートフォン対応を意識した掲載(レスポンシブデザインへの対応)を行うことで、容易に候補者情報へのアクセスが可能になります。
この稿を綴っている現時点では、いずれの自治体も実現には至っていません。
技術的に不可能な要素は一切ありませんが、もしも制約やハードルがあるとすれば、それは「前例がないから」その一点につきます。
あるいは、「抵触するおそれがある」という言葉が絶えず付随する、公職選挙法の曖昧さゆえでもありましょう。
そうした意味では、選挙におけるインターネット解禁はまだ発展途上にあると言えるでしょう。おそらくは、以下のプロセスを経ることで一気に進展する可能性があります。
1)身近な政治家に、上記施策の実現可否をたずねてみる。
2)自治体の選挙管理委員会等で検討の対象となり、見解が示される。
3)総務省で「抵触」の見解がなされなければ、実質可能になる。
果たして、ネット選挙における運営サイド(総務省、もしくは各自治体の選挙管理委員会)のブレイクスルーは訪れるだろうか。何年先になるのか、あるいは何十年先になるかわかりません。
近くて遠い、ネット選挙の近未来。皆さんがお住まいの自治体では実現に踏み出すことができるのか、それを見守るのもまた一興かも知れません。
本稿をご覧いただいた有権者の皆様は、ぜひ地元の議員の方に訪ねてみてはいかがでしょうか。
また自ら発言することのできる議員の皆様、是非とも以上をご検討いただけると幸いです。