2017.10.9
議員の資格10カ条
当財団の理事・事務局長を務める石田が昨年上梓した「18歳からの投票心得10カ条」。
同書には咢堂・尾崎行雄が1889年(明治22年)『欧米漫遊記』初出の「議員の資格十ヶ条」という条文が再録のかたちで収められています。
1890年(明治23年)に国会が開設され第1回総選挙が行われる前年、保安条例により東京退去を命じられた尾崎行雄がイギリスに渡り、当時の議会先進国であったイギリスで学び、掴み取った教訓が凝縮されています。
いよいよ明日からは衆議院解散に伴う総選挙が公示されます。私たちはどのような観点で政治家を選ぶべきか。
願わくば候補者を以下の観点で10点満点評価し、より高い点をつけられる人物を選びたいものです。
国会議員に重要な資格中、最も重要なるものの十ヶ条。
(1)国会議員は広い視野で、内外の形勢をきちんと分析する能力を持たなければならない。同時に、行政・実務についての見識も持たなければならない。これは法律によって設定することのできない資格で、財産や年齢よりも重要だ。
(2)国会議員は、物事の善悪をわきまえて、正しい行動をとろうとする道徳心が強くなければならない。「政は正なり」という言葉もある。不正をただすためには、政治家自らも正しき行いをしなければならない。このこと自体は誰もが同意するが、当たり前のことは、つい見過ごされてしまい、かえって実行されないものである。実行こそが重要なのだ。
(3)国会議員は、世のため、人のために尽くそうとする公共心が強くなければならない。これを養成するのは決して簡単なことではない。しかし、政治家に公共心が有るか無いか、公共心が強いか弱いかで、国家が栄えるか、滅びるかが決まると言っても過言ではない。この公共心の価値、大切さを知るべきである。
(4)国会議員は、時の権力に屈しない勇気を持たなければならない。わが国では、多年にわたり大臣や官僚を威張らせてきたため、人民は、権力を握るものをおそれたり、すり寄ろうとしたりする傾向がある。人民の代表である議員は、時の権力に迎合する(自分の考えを曲げてでも、相手に気に入られようとする)ことなく、間違いは間違いだと言い、正しきことを実行する勇気がなければならない。
(5)国会議員は、名利心(名誉や利益を欲する心)が薄くなければならない。名利心が薄くなければ、名誉を求めるがあまり権力に屈したり、自分の利害だけを考え、損得勘定で動くようになる。それでは、議員としての使命を果たすことはできない。
(6)国会議員は、自分の主義主張をしっかりと持ち、それを守り通す姿勢がなければならない。間違った主義を持つものであっても、全く主義を持たない者よりはましだ。主義を持つからこそ、その主義の過ちに気付けば、自分の意志で道を選び直す覚悟もできる。最初から信念も主義もない者は、時の権力に溺れたり、操られたりする可能性が高く、有害無益である。
(7)国会議員は、他者に左右されない確固とした判断基準、本質を見極める目を持たなければならない。それがなければ、柳が風になびくがごとく、誘われるまま西に行ったり東に行ったりしてしまう。そんなことでは国の舵取りはできない。
(8)国会議員は、細かな点まで深く考えたうえで発言・行動しなければならない。その場の思いつきで指示を出したり、引っ込めたりすることがあってはならない。政治上の指示・命令は、時として国の命運に重大な影響を及ぼす。朝令暮改(朝に出した命令・政令が夕方にはもう改められること=方針などがすぐに変わって安定しないこと)は弊害が大きい。
(9)国会議員は、物事を冷静に判断し、穏やかな言動で、確実に実行していかなければならない。過激な言動や、痛快な挙動は避ける必要がある。過激で乱暴な人間は、世の中の流れや国民の心情を深く見通すことができない。痛快な振る舞い、見せかけだけの勢いでは、政治を前に進めることはできない。
(10)国会議員は、多少は演説が上手くなければならない。自らの主義主張をきちんと伝えるためには、演説の力が必要だ。ただし、みだりにこれを使用しない人物を議員に選んだほうがよい。演説の力は、本当に大事な場面で発揮すべきものである。普段、何でもない時にこの力を使う者は、自分の言葉に溺れ、過信するおそれがある。
18歳からの投票心得10カ条 特設サイト
http://www.ozakiyukio.jp/kokoroe/