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Yukio Ozaki and his daughter
("Yukio Ozaki and his daughter" Yousuf Karsh,1950)

2018.2.27

全ては「識る」ことから始まる。敢えてこの2冊を推した理由

咢堂塾ブックオブザイヤーの軍事・安全保障大賞に輝いた二冊の書籍
日米同盟のリアリズム」、そして「主権なき平和国家」。
実は、今回の選考でもっとも授賞が悩まれたのがこの二冊でした。
著者の小川和久先生と伊勢﨑賢治先生はそれぞれ静岡県立大学と東京外国語大学で教鞭を執られる傍ら、咢堂塾の講師として登壇いただき、幅広い知見を授けていただいています。

 

すでにお気づきの方もいらっしゃるかも知れませんが、2014年から始まった
「咢堂ブックオブザイヤー」創設以来、毎年の授賞となっています。

小川和久・静岡県立大学特任教授
2014年 日本人が知らない集団的自衛権(文春新書)
2015年 危機管理の死角(東洋経済新報社)
2016年 戦争が大嫌いな人のための正しく学ぶ安保法制(アスコム)

伊勢﨑賢治・東京外国語大学教授
2014年 日本人は人を殺しに行くのか(朝日新書)
2015年 新国防論 9条もアメリカも日本を守れない(毎日新聞出版)
2016年 テロリストは日本の「何」を見ているのか(幻冬舎)

この「咢堂塾ブックオブザイヤー」、そもそもの始まりは、数多の文学賞やミステリー、エンターテイメントなどが百花繚乱の一方で、政治と真剣に向き合う書籍が脚光を浴びることの少ない現状への危惧から生まれたのが原点でした。
幸いにも、咢堂塾の講師陣は各界のトップランナーであると同時に、優れた著作の持ち主でもある。塾の学びの一環として、講師の著作も大いに読み込み、議論や思索の一助としたい。
幸いにも、創設当時の咢堂塾講師陣は安全保障や軍事、国際紛争などのエキスパートが勢ぞろいしていました。


第一回はそのような形でスタートしましたが、翌年の2015年、そして3年目となる2016年も、両先生の著作は単に咢堂塾での教材としてのみならず、与野党の立場を超えて「すべての政治家に読んでいただき、理解を深めていただきたい」そう言わしめるだけのものでした。だからこそ、3年続けての授賞となりました。

大いに悩んだのは、4回目となる2017年の選考会議でした。
選挙部門の大賞選考では「多選の是非」が話題となる一方、他部門の連続授賞についても「さすがに続けすぎではないか」との意見も相次ぎました。
そうした中でも、いずれも厳正な審査選考の結果、今年も大賞を贈ることとなりました。
各作品の選考時に重視されたのは、以下のポイントでした。

・選考委員(塾生やスタッフ、役員)の選択眼に適うものであること
・著者の主観や想いだけに捉われず、自ら現場に足を運び得られた「ファクト」ベースに拠るものであること
・保守やリベラルといったバイアスに捉われず、現実を直視していること
・その上で、わが国のあるべき進路を提示していること


更には、各書籍が世に出る上で「裾野の可能性」を感じさせることも大きなポイントとなりました。
「日米同盟のリアリズム」では、著者の小川和久先生が冒頭の献辞でも述べられているように西恭之・静岡県立大学特任助教の精緻な調査が、
そして伊勢﨑賢治先生の「主権なき平和国家」では、ジャーナリスト布施祐仁氏との二人三脚がそれぞれの書籍に対する客観性と説得力を与えたことが見逃せません。
2017年のブックオブザイヤー大賞は著者のみならず、それぞれの出版を支えた西、布施両氏に対しても贈りたい。そうした想いが込められています。

そして授賞された両作品は、衆議院・参議院それぞれの議員の方々にもぜひ読まれて欲しいと切に願います。
一方では日米同盟、またもう一方では国連と論旨の起点こそ異なりますが、共に
国会論戦では、それぞれの書籍を読まずして、わが国の守りを語って欲しくない」良書です。

安全保障や軍事というテーマの性質上、決して平易ではありません。
それでも、本ホームページをご覧の皆様に想起していただきたいのは次のようなことです。

もしも国会議員の方々が両書を精読されたらば、安全保障をめぐる論戦は決して茶番にはならないでしょう。
法案を進める側も、まったをかける側も、国民が呆れる議論はしないでしょう。
やがては衆参すべての議院において必読の書となることを願いつつ、咢堂ブックオブザイヤー2017大賞(軍事・安全保障 )を贈りこれを賞します。